◇・エデンの光と影・◇~3~

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重く響いた教高神の、怒気を含んだその言葉。

もじもじと指を絡めながら、コトコは様子を伺うように、チロリとそのシルバーがかったブラウンの瞳を何度も盗み見る…

その端正な顔の眉間にはクッキリとしわが入り、眼光は鋭く光っていた。

 「あ…ご、ごめんなさい…」

 「いいから…ほら練習だ、その翼、今日こそ自力ででおさめてみろ」

 淡い光が注ぐ長椅子にゆったりと座った教高神は、機嫌悪そうに溜息を付いた後、コトコに命令した。

 「う…うん…」

 コトコは、他の天使が当たり前に出来る‘翼を背におさめる行為’を、幼い頃から何故か習得出来なかった。

先ほどのように悪戯で脇腹や二の腕を少しでも突付かれただけでも敏感に反応し、翼は背から簡単に姿を現してしまう。

なのでその後自分一人の力でおさめる事など、皆無に等しいのだ。

 「あう~~うう~~」

両目をぎゅっと瞑り、神にお祈りするように両手を強く組んだ状態で唸っている姿を見て、教高神は腕を組み、再び大きなため息をついた。

 「おまえなあ、常日頃から言ってるが、翼を背におさめておく事は当り前の事なんだぞ。いい加減できる様になれよ、気を引き締めておく鍛錬の一つにもなる。おまえの頭の中には大きなプリンでできてるのか?」

 その言葉を聞いた途端、コトコはぎゅっと瞑っていた瞼を大きく開き、ぱっと顔を輝かせた。

 「プリン!あたしプリン大好き!とくにイリエ君のおばさんが作った花蜜のかかったミルクのプリンが一番大好き♪」

 教高神はコトコの能天気さにあきれ、やれやれと肩を落とした。

組んでいた腕を解き、額に手の平を当てながらぴょんぴょんと跳ね回るコトコを見て、もう言葉も出ない。

 「でもね、プリンよりも何よりも誰よりも大大大好きなのは…ジャーン!イリエ君よ♪///

 「………おまえなぁ、ったく何歳だよ。まだまだお子様だな」

 教高神のそのたった一言でぷくりと頬を膨らませたコトコは、可愛らしくぽってりとした、まるでサクランボの様な唇を尖らせた。

ぱたぱたと足早に教高神に近づいて目の前に跪くと、見上げる様に顔を近づけてきた。

 「もうッ!この間16歳になったもん、立派なレディ-よ!?あとちょっとしたら、ミカエル様みたいな綺麗な翼に生え変わるわ!背だって伸びて、グラマーですんごく美人になるもの!」

ぷりぷりと怒っているコトコを暫くの間放置し、冷ややかな視線を送っていたが、そのコロコロと変わる表情を見ておかしくなり、つい ぷっと吹きだしてしまう。

 「なんで笑うのよ!レディーに対して失礼だわ!!」

 「ああ、悪い、つい…。プッ、ククク……」

 教高神が笑い始めた事で、コトコは少し拗ねたような表情を浮かべると、今度はぶつぶつと独り言を呟きはじめた。

 「もういいもん、わかってるもん、でもきっと、素敵な素敵な天使になるわ…きっとよ?だから傍にいて、ずっと私の成長を見ててよ、イリエ君…」

 大きな黒曜石の様な瞳が潤み始め、真っすぐに見つめられた瞬間、教高神は小さな罪悪感に似た感情にとらわれ胸が苦しくなり、慌てて視線を逸らせた。

 この理解できない感情を吹っ切る様に一度立ち上がると、眉間にシワを寄せながらすぐに座りなおす。大きく息を吸い込んでからゆっくりと吐き出し、コトコと視線を合わせた。

 「ああ、見ててやるよ。俺が驚くほどの美しい翼を持った天使に成長した姿を見せてみろ」

 「本当!絶対よ♪」

 

トコの花が咲いたような笑顔を目にして、ドクンと跳ね上がった教高神の心臓。顔が熱くなってきた事に気が付き、それを誤魔化す為に、コトコの小さな頭をぽんぽんと軽くたたいた。

 「さて、お遊びはここまでだ。ほら、練習練習、やってみろ」

 「は~い、でも本当に出来ないんだけどな…なんで皆できるのかなぁ?わたし、別に出しててもいいと思うんだけど…入江君のおばさん綺麗だって言ってくれるし…」

 「………お袋は別だ。おまえな、なんで翼をおさめておくのか習っただろ?授業ちゃんと聞いてたのか?小学園の弟のユウキだって出来るっていうのに。 あいつなんか幼学園中には完璧に出来るようになったんだ。はずかしくないのか?」

 未だに跪いたままの状態のコトコは、教高神に注意された途端笑顔を引っ込め、しゅんとして俯いてしまった。

 「お袋がおまえの翼が気に入ってて、綺麗だからって普段から家の中で出しっぱなしにさせてるのもいけないんだろうが…俺の力を借りなくてもちゃんとおさめていられるようになれって毎日言ってるだろう!」

 「…頑張ってるけどどうしても出来ないの…しまっておくと背中がウズウズして、止まらないんだもの、結構苦しいんだから。イリエ君は幼学園入るずっと前から出来てたんでしょ?でも、私は……無理よ、なんかそんな気がする。出しておくのが普通な気がするの」

 「あのな…おまえのいる特下級のF組の奴らでもできてるんだ?そいつらと同じレベルのお前が何で出来ないんだよ」

 「そ、それは…わかんないわ…へへへっ…でもね、たとえ翼が出てても皆何も言わな…」

 片手を上げてコトコの言葉を制した教高神は、もういい、とばかりに頭を左右に振った。

 「もういい…」

 「あの…ぅえ…ごめんなさぃ…クスンッ…」

 それ以上言い返す事が出来なくなり、ポロポロと涙を流し始めたコトコ。教高神は今日何度目かの溜め息をついた後、コトコを立たせた。

 「ほら、ちょっと腕上げろ」

 「うん…」

 両方の手で、コトコの細い腰を抱え込むようにして持ち上げた教高神は、自分の膝の上に跨がせるようにストンと座らせた後、コトコの陶磁器の様な真っ白な頬を、大きな手の平で包み込んだ。

 

 

 

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“◇・エデンの光と影・◇~3~” への 2 件のフィードバック

  1. お久しぶりです。さと~です。
    覚えてますでしょうか…(汗)

    九戸さんのブログに来れて嬉しく小躍りです(,,>᎑<,,)♪
    九戸ワールド楽しみにしています!

    1. さと~様

      訪問、コメント有難う御座います(⋈◍>◡<◍)。✧♡
      お久しぶりすぎて、本当に申し訳ありませんです(汗
      また訳の分からない展開になると思いますが、お付き合い頂けたらとても嬉しく思います!
      イタKissの世界をなるべく壊さないように頑張ります!(多分…)
      是非今後とも、九戸をかまってあげて下さいマセ。
      宜しくお願い致します。

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