◇・エデンの光と影・◇~5~

 

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「ァッ…ン、ハァ…ありが…とぅ……」

「いいから…」

 

 

神々しい光と共に小さな叫び声が消えると、教高神はそっと、コトコから体を離した。

 静かに時は過ぎ、辺りには元の書庫内の雰囲気へと戻っていく。

その行為が終わるのを待っていたかのように小鳥はさえずりはじめ、さらりとした風が吹き込んできた。

教高神の神力により、白く華奢な背中に黒い翼をおさめられたコトコは、汗で張り付いた黒髪を整える余裕も無く放心し、潤んだ瞳を宙に泳がせている。

 一方、神力を少々与えすぎた教高神も大きく深呼吸をし、ぐったりと長椅子に身を沈ませていた。

 「イリエ君…ハァ…ぅ…本当にごめ…さい…」

 その教高神の上にもたれかかったコトコは、更にぐったりとした様子で、ハァハァと肩で大きく呼吸をしている。

 その様子を見ながら教高神は口角を上げ、≪やれやれ―≫と仕方なさそうに声をかけた。

 「おまえさ、いつまでも俺に頼ってるわけにはいかないだろう?俺だって一日に数回しか対処出来ないんだ、毎朝手伝ってやってるのに、最近じゃすぐに出しやがって…」

 「ぅ…ごめんな…さい、なんでこんなにすぐにでちゃう……のか、私にも…分からないの…迷惑かけないように頑張るから…ごめん…なさァ…」

 少しばかり落ち着きを取り戻した教高神は、溜め息をつきながら自分にもたれ掛かるコトコの髪を一房軽く引っ張り、指に絡ませてクイックイッと引っ張って遊び始めた。

 「俺その台詞も何回聞いたっけ」

 「ごめんな…ぁッ…ッんんッ……髪の毛…やァ…抜けちゃうぅ」

 「抜けねーよ、バーカ」

 「ちが…ッう、そうじゃないの……んッ」

 「もういい…きょうはもう出すんじゃないぞ」

 「うん…」

 何度も言われ、いつも怒られているのに何故やってしまうのか…。

コトコは涙ぐんだ瞳を開いて、じっと見上げた。

 「ごめ…ふぇ……なさッ…いィ…」

 「もういいっ!」

 「でもぉ…」

 一瞬、どくんと心臓が跳ねたような気がする…

少し落ち着きのなくなった教高神は、コトコを横に抱きなおして、テラスの向こう側へと視線を向けた。

「で、今日はなんでここに来たんだ?お袋に何か頼まれたのか?まさかとは思うが、また俺が目的なんじゃないだろうな…」

 ピクンッと反応した琴子は、教高神の膝の上でにっこりと笑みを浮かべた。

 「あの、ね。怒らないで聞いてくれる?

 「あ?」

 「あのね♪大正解!!イリエ君に会いに来たの!イリエ君の大きいお家より、ここの方が狭いから近くにいられるし…それに2人っきりで会えるのって、ここだけでしょ!」

 「おい…ここのどこが狭いんだ?天使界で一番の書庫なんだぞ!それに2人っきりってなんだよ!別におまえと付き合ってるわけじゃない。どっちかと言うと保護者みたいなもんだろうが!年が何歳離れてるとおもってるんだ!」

 「えと~あたしが16歳でイリエ君が23歳だから~…7歳!」

 「……よく間違えないで計算できたな…ってそうじゃないだろう!」

へへへ…とコトコは笑いながら、テラスの向こうに視線を向けた。

 「あのね、一昨日植物園のお花さんにね、また来るって約束したの、あとね…」

 「またそういう危ない発言を…気をつけろよ。後は?」

 今度は頬を上気させて、コトコは照れくさそうにはにかんだ

 「あのね、私………彼に会いにきたんだ♪」

 「…彼?」

 「うん♪」

 教高神の整った眉がピクリッと動き、眉間にシワが寄る。

「おい、俺は毎日毎朝貴重な朝の刻をおまえの翼をおさめるために時間を割いてやってんだぜ?しかもお前の望み通り2人っきりでだ…なのにおまえは………彼だと?なら彼に翼をおさめてもらえよ。ここじゃなくてそっちにいって休めよ!」

 自分の膝の上からコトコをどかすように立たせようとするが、コトコは身体を捻って困ったような顔を向けた。

 「違う!違うよ~一番大好きなのはイリエ君♪♪それに私の翼をおさめる事が出来るのはイリエ君だけよ?本当よ?私のお父さんも、イリエ君のお父さんも、おばさんも…ユウキ君もみんな出来なかったし、クラスの誰もできなかった。学校の先生は相手にしてくれないし…」

 眉間のしわが一本 また一本と増え、教高神の身体が黒いオーラに包まれ、小刻みに震え始めていく。

 「……おまえ誰にどんだけ背中と翼見せて触らせてんだよ…!!!」

 

 ピカ!ビシッ―ドン!バリバリバリ!!

 

「あ、イリエ君、どこかに雷が落ちたみたい。帰り雨降ったらどうしよう…」

コトコはぴょんっと教高神の膝から降りると、テラスに駆け寄った。

両手を天にかざし、雨粒が落ちてこないか不安げに見上げている。

 ≪なんかイラつく…わけわかんねー………≫

 頭の痛くなった教高神だったが、いらいらしながらも立ち上がり、コトコの背後にそっと立った。

上半身を倒し、気づかないコトコに顔を近づけていく。

 「雨なんか降らねーよ。ばーか」

 あげていた両手を下ろし、声がする方へフイッと振り向いたコトコは、教高神の顔があまりにも近かった事に気がつき、真っ赤になって視線を床へと向けた。そして続けざまにコトコの耳元で囁く。

 「で、彼って誰なんだよ」

 「あ、うん…あのね、昨日すごい風だったでしょ?」

 「ああ…風を司るレフリエラ・マツモト風女神が、スンドウラ球心天使に対して凄い剣幕で怒ったらしいぞ。被害が出るからスンドラ球心天使にいい加減にしろって言ってるのに…ったく、くだらないー」

 「そうだったんだ~スンドウラ球心天使様、またなんだ…可哀想だね…」

 「なんでだよ」

 「うん、気持ちはわかるわ……」

 「は?……で、おまえの言った彼ってどいつなんだよ」

 コトコはテラスのふちに手を置き、真っ直ぐ植物園を指差した―

 

 

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6~

 

 

 

 

 

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