◇・エデンの光と影・◇~8~

 

神学天使イリエ(高校生位)←教高神イリエ(博士~)と受け取って下さい。
ナオキがこの位↑の年齢の頃、コトコは高学年~中学校位です。

 

 

 

 

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唇を重ねあい、甘い蜜を体内に取り込む。
すると失われた神力が再び取り戻され、それ以上の力が与えられる…

教高神がこの方法で神力を取り戻せると知ったのは、偶然の出来事だった。

 

 

 

コトコの父親、アイハラ・クルト・シゲオは、ディオニュソス神(酒を司る神)に仕える専属のシェフだった為、なにか外事等があれば、方々の星々についていかなくてはならなかった。

その為、幼いコトコはその度にどこかに預けなければならない。

以前は幸運な事に、その頃住んでいた場所の主人に預ける事が出来たが、その場所を突然離れる事になり、住む所もなく、悩みに悩みぬいていた。

そんなある日、特別な許可を取り、コトコを連れてディオニュソス神と共に土星に赴いたシゲオは、そこで幼馴染のイリエ・アティア・シゲキ夫妻と偶然出会った。
シゲオの後をちょこちょことくっついて歩くコトコを一目見て気に入ってしまったシゲキの妻、イリエ・チュス・ノリコの一言で、シゲオとコトコはシゲキの家に同居する事となり、現在に至るのだが…

 

 

コトコが神学天使イリエの家に同居し始めた頃、天使界にその黒い翼を見て顔を歪める天使が多々存在していた為、神学天使は母親の命により、己の神力を使い、毎朝時間をかけて、その背中に翼をおさめてやっていた。

まだその頃には、神力を取り戻す方法など知らず、神学天使イリエは自室でただぐったりとソファーに身を沈め、体を休ませるだけだった。

そしてそれは、同居を始めて、数週間がたった日の事だった。
神学天使が神力を使い、疲れた体を休めようとソファーにどっかりと腰を下ろしたその時、いつもなら自分の傍らではぁあはぁと大きく肩で呼吸をしているコトコが、真っ赤な顔でふらふらしながら立ち上がり、潤んだ目を教高神へと向けてきた。

「あのね、イリエ君。お話があるの」

「なんだよ…疲れてるんだ、静かに座ってろよ」

「いいから聞いてよ。あ…あのね、もう私の為に神力使わなくていいよ?いつも朝から無理させちゃってごめんなさい」

「は?いつもの事なんだから今更だ…別に構わない」

「でも、もういいから…ね?」

額に噴き出した、珠のような汗を手の甲で拭いながら、コトコは神学天使イリエを覗き込むようにして身を屈めた。

「なんだよいきなり。理由は?ああ言わなくてもいい、気にするな」

「でも…」

「煩い」

神学天使イリエに鋭い目で睨みつけられ、コトコはびくりと身体を震わせた。
しかしそれでも頑なに断り続け、次第に二人の言い合いは、誰も寄せ付けない程の大喧嘩となってしまった。

「なによ!イリエ君の分からず屋!時間だって勿体ないし、毎日朝からこんなに疲れなくっていいんだよ!それに……」

「だから言ってるだろ!ちょっと休めば体力だって神力だって元に戻るんだ!何回言ったらわかるんだこのバカ!‘それに’って何なんだよ!‘それに’って、はっきり言えよわかんねーんだから!」

「それは!//////…私にもよくわかんないのよ///その…だから…。べ、別にいいじゃない、とにかく、これ以上イリエ君に迷惑かけたくないだけよ!べーだっ」

「おまっ、なんだよその態度!ふざけるな!」

「もう!頭良いくせになんで分からないのよ!イリエ君なんかだいっ嫌い!!」

「なんだよ!俺がいけねーのかよ!!」

苛立ちがおさまらない神学天使イリエは、勢いよく立ち上がるとコトコの細い腕をぐっと掴み、乱暴に引きよせて顔を近づけた。
途端、目に飛び込んできたのは、黒水晶のような濡れた瞳。
神学天使イリエは心臓がどくんと跳ね上がったのを感じ、慌ててその腕を離しまたソファーに座り込んだ。

一瞬脳裏を横切った、熱い濁流。
訳も分からず顔が熱くなるのを感じた神学天使イリエは、それを誤魔化すように首を左右に振った。
深呼吸を数度繰り返し、再びコトコを睨みつける。

「ああ、もういい、勝手にしろ、これ以上ガキなんかに構ってられるかよ。おまえと話しをしているだけでも疲れるんだ。ったく、生活のペース乱しやがって。おまえがこの家に来てから鬱陶しくてうんざりしていたんだ。丁度良い、なんならこの家出て行けよ。そんなに俺といるのが嫌ならな」

勝手にぽんぽん出てきてしまう言葉。
ブレーキをかけたくても自尊心が邪魔をして、今の神学天使イリエには止める事が出来なかった。

「っ………そんなにあたし、イリエ君の邪魔してたの?」

「ああそうだよ!おまえがワケの分からない事で俺を怒らせるからだ!毎日毎日本当に迷惑なんだよ!俺の目の前から今すぐ消えてくれ!今すぐにだ!」

父親が外事で当分帰って来ない為、一人天使界に残っていたコトコは出て行けと言われて戸惑っていたが、イリエ家の長男であり、ゆくゆくは上級天使となる神学天使の言葉に口を出す事は出来ない。

迷惑をかけてしまっているのは重々承知している。
幼いコトコには、この家を出て行く…という決断しか出す事ができなかった。

ソファーに仰向けで身を投げ出し、長い脚を組んでいる神学天使イリエをちらりと横目に映したコトコは、真っ赤になってしまった目を隠すように俯き、頭を下げた。

「……わかった…今すぐ出て行く。今までありがとうございました」

「ああ、せいせいするよ!元の静かな生活がかえってくるんだ。二度と俺の前に顔をみせるな!バカコトコ!!」

「………ばいばい、イリエ君」

コトコは小さな声でそう言いながら、未だ重い身体を引きずるよう様にして、重厚な木製のドアに手を伸ばした。

「なんなんだよ…」

ソファーに寝ころんでいた神学天使イリエは、遠のく足音を聞きながらポツリ呟いた。
苛立ちを和らげようと、唇を白くなるまで噛んだり天を仰いだが それらは全く意味を成さず、首を左右に振りながら大きく溜息をつく。

ふと視線を落とせば、淡いグレーのフィオリデペスコで統一された大理石の床の上に、コトコの黒い羽根が一枚落ちている事に気が付いた。
がばっと起き上がりそれを拾い、長い指先で遊ぶようにクルクルと回す。

コトコの瞳や長い髪と同じ、湖に映り込んだ月夜のような 艶めいた黒。
天使界には決して存在してはいけない闇の色。
それをおさめてやっていたというのに、何が気に入らないのか…

≪なんなんだよ急に、折角俺が 毎朝神力使ってまで…≫

納得のいかない事には耐えられない神学天使イリエは、コトコの羽根をぐっと握り締めると、開け離れたドアの向こう側へと視線を向けた。

 

 

 

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